安倍談話 仕掛けの全貌を分析してみました
本稿は、前稿の続編である。
安倍談話を魔方陣的視点から解き明かすと-----その狙いは?
http://nihonnococoro.at.webry.info/201508/article_20.html
前稿では、古代の文書並の仕掛けが、安倍談話に仕掛けられている可能性を指摘した。
本稿では、安倍談話を、「結界のはられた魔方陣」的仕掛けが施された政治文書として眺めた場合、どういう仕掛けが施されているのか、文章作法本的視点から、分析を試みる。
■文章作法的にどういう性格を持った文章なのか
私は、文章の書き方本、作法本、何冊か読んでいる。実は、文章作法本を読むのが好きなのだ。
論文ものでは、「論文のレトリック」澤田昭夫(講談社学術文庫)が秀逸だと思っている。「理科系の作文技術」(木下是雄)は、基本中の基本について書いてある良書だと思う。
この二冊については、正当な文章作法本と評価している。
一方、これらと対極に位置づけられる、朝日新聞社から出ている、本田勝一の文章作法本、読んではみたものの核心部分が、「理科系の作文技術」ほどの明快さ、切れ味に欠けることに気が付いている。捏造シナリオという意図が前提にあってそう書いているのであろう。
さて、この種の本は、論文作成の大学生などをターゲットとする関係で、曖昧さを極力排除し、わかりやすくまとめる、わかりやすく表現するスキルを身につける目的で書かれている。
文章に、言外の意味を持たせることは、基本的に推奨されていない。
ところが、安倍談話は違う。書かれた文章は、建前的な歴史シナリオ、外交儀礼的な文章が続く。何度か読めば、書かれている前提条件的表現を読み込むと、そうでない前提の場合、すなわち行間の意味が透けてくるように書いてある。
田母神俊雄のツイッターコメントがさほど問題視されず、百田尚樹がどうして左翼から標的にされやすいか、田母神俊雄は対象を正確に特定し書かれている(批判する相手に対して論争する意思表示を含む)のに対し、百田尚樹の場合は表現的にストレートであるものの対象が大ざっぱで曖昧な部分がなきにしもあらず、という印象がある。
つまり、田母神俊雄は理科系的に正確な文章を信条とし、百田尚樹は小説家である関係で文科系でありシナリオ的には面白いのだが正確さの点で今一つの部分がある。朝日の新聞記事などは、田母神俊雄の文章と比較すれば、作法的には悪の作法の限りをつくしていると言えるかもしれない。
これに対し、安倍談話は、文章作法本の価値観で眺めれば、言外の読み方ができる点において、学生が論文を書く際に必要となる(正当な)表現作法とは言い難い。意図して、言外の意味を持たせコントロールした点において、朝日の新聞記事以上の「悪の作法」を駆使しているのである。
その一方で、建前で書かれた部分、外交儀礼的表現については、それなりの美文である。
文章スキル的に、突出したレトリックスキルを有する政治家が、これら文章作法を駆使してまとめたと見れば、「重要法案の条文を読みこなせない政治記者たち」に、批判できる余地を見いだせるはずがない、という見方ができる。
政治記者たちは言うだろう。自分たちの意図と違うと。しかし、これまで、重要法案(特定秘密保護法、テロ3法、安保法制)の条文を引用した記事が書けていない点において、政治記者は、公務員的モノサシを適用すると、初級か中級公務員程度の文章スキルと評価せざるを得ない。社説は、その程度の人物が書いた文章ということである。
安倍談話は、新聞記事を書いている記者たちが、束になろうが、逆立ちしても書けない文章なのである。
記者諸君、悔しかったら、安保法制の条文を引用した記事を書いてみたまえ!
安倍談話の作文は、最近の重要法案(特定秘密保護法、テロ3法、安保法制)と同様、安倍首相の首相補佐官、磯崎陽輔議員が手がけたものであることは自明である。
私は、これら重要法案の条文添削、説明文書、Q&A、解釈解明等、一連の文章化作業に係った人物(たぶん、磯崎陽輔議員)が、安倍談話を渾身の力でまとめ上げていく姿を想像している。
なんとなく、(良い意味での)政権中枢の高笑い???が聞こえてくるような気がするのである。
そして、同時に、これまで良書だと思ってきた「文章作法本」が如何に「きれいごとの世界」の文章作法本であったか、について知るのである。
すなわち、安倍談話は、文章作法的に、学生向けの文章作法本とはなりえないが、「政治文書の書き方」みたいな文章作法本があれば、最高の教材となりうるのである。
■安倍談話の狙いは何だったのか
一言で書くとこうなる。
日本の保守層とアメリカをターゲットとし、過去の談話を完全否定し、敗戦国としての謝罪はこれで最後としたい、と意思表示し、同時に、中韓による歴史認識に係わる度重なる謀略的外交攻勢に対し、これ以上続ければ反転攻勢するぞと寸止めした、ところにある。
■どういう人がどういう役割を担ったのか
・談話骨格作成者
安倍首相本人である。安倍首相は、祖父岸信介元首相の回想録を読み、祖父の願いの実現、いや祖父が導いた戦後世界の最終処理の現実化を目指した。岸信介元首相の回顧録を読み、あの巣鴨プリズンにおられた方々の気持ちを安倍首相は理解し、汲み取ったはずである。
・歴史シナリオ作成者
近現代史、日米外交史に明るい方。渡辺惣樹氏の歴史書を読まれている方なら、安倍談話の歴史シナリオは、渡辺惣樹氏の歴史書のまえがきかあとがきに出てくる、一般化処理された、さらりとした筆致に似たものに気づかれていることとと思う。私は、歴史シナリオ作成者は渡辺惣樹氏か、渡辺惣樹氏の歴史書をかなり読み込んだ人物であろうと予想する。
・スピーチライター
オバマ大統領の選挙期間中の演説を誰よりも理解し、安倍首相議会演説の草稿に参加した人物。多分、自民党本部関係者?
この人物は、相当前に、スピーチライターとして、安倍首相に談話原稿を提出している可能性がある。私が同じ立場なら、迷わずそうしたからだ。
・キーワード処置、レトリック担当
ずばり磯崎陽輔議員である。国会議員の中で、ダントツのレトリックスキルを有する議員。新聞記者、言論人でこの議員の文章表現スキルに敵う人はいないだろう。
■どういう作業手順で作成されたのか
①安倍首相が骨格を作成、各担当に提示
②歴史シナリオ作成者が、全体構成、位置づけ、論旨を明示
③スピーチライターが、表層的な部分の建前原稿を作成
④キーワード・レトリック担当が、原稿の表の意味、裏の意味、暗示されるメッセージを吟味、最終チェック
⑤個別修正の都度、②~④を繰り返す
⑥関係者全員での読み合わせ
⑦最後に官邸神社?での奉納?手続き?を経て発表
■談話作文は、概観的(前半、後半)に読むと、どういう論理構造になっているのか
ここが本稿の核心となる。
談話は、時限的に区切ると、①明治から戦争の時代、②戦争の時代、③戦後から現在まで、④未来、の4つに分かれる。
ただし、それぞれについて、実は、3次元構造になっている。
すなわち、①~④について、
「戦勝国側が納得せざるを得ない、建前としての歴史シナリオ」(第一次元)、
「外交儀礼上のリップサービス的要素を含む演説要素」(第二次元)、
そして、第三次元は、談話本文に書かれていないことだが、主語・キーワード操作による「過去の談話を上書きし、歴史の真実を暗示させるメッセージの埋め込み」が為されている。第三次元は、前述の二つ次元の裏の意味、たぶん、これが本音を巧妙に暗示する役割を担っている。(安濃豊氏指摘の「寸止め処置」)
この政治文書は3次元構造となっている点において、極めて珍しい文書である。また、恐るべき仕掛けが施されている。
読者の皆様は、三次元文書について、どういうイメージを持たれるであろうか?
私は、難解ではあるものの堅牢なイメージを抱いている。
この談話が文章的に一見散漫かつ長文となったのは、三次元機能を付加した結果であると私は見ている。
前稿で、安倍談話を魔方陣に例えて説明した最大の理由は、ここにある。
安濃豊氏、高橋洋一氏は、「戦勝国側が納得せざるを得ない、建前としての歴史シナリオ」(第一次元)、「外交儀礼上のリップサービス的要素を含む演説要素」(第二次元)について、かく論評している。
前半は歴史シナリオにおいて、日本が世界が植民地支配の時代において独立を守り抜くために懸命の努力をした件(欧米列強の植民地支配への反発???)で始まり、後半は外交的儀礼に「カントの3角形なる理論」を用いた誰も否定できないリップサービス的作文に徐々にシフトしたと解することができる。
・前半部分は植民地支配否定、後半はリップサービス 安濃豊氏
http://blog.livedoor.jp/giranbarekanjya/archives/51457968.html
・後半の戦後部分以降の表現においては「カントの三角形」(民主化、経済依存度、国際機関加入)理論を駆使した外交文書の性格を有する 高橋洋一氏
・反省とおわびを分離し、おわびを平和と繁栄のための尽力するという行動で示した ブログ「私的憂国の書」
http://yukokulog.blog129.fc2.com/blog-entry-2048.html
■各次元の相互関係はどうなっているのか
「戦勝国側が納得する建前としての歴史シナリオ」は、建前の歴史シナリオではあるものの、一応表の意味として受け取れる。
「外交儀礼上のリップサービス的要素を含む演説要素」は、建前の外交メッセージではあるものの、一応表の意味として受け取れる。
主語・キーワード操作による「過去の談話を上書きし、歴史の真実を暗示させるメッセージの埋め込み」は、前述2つの建前に対し、中韓、反日マスコミにつけこませない意図が込められている。欧米諸国に対しては寸止め、したと読み取れる箇所もある。
外交儀礼上の作文に、前置き的な表現が続き、それを前提条件と読めば、中韓が前提条件を外した外交に出れば、日本政府は反撃できる根拠を宣言したとも読める。
村山談話、河野談話を上書きし、第二の村山談話、第二の河野談話の出現を文章的に予防しうる内容ともとれる。
数人の言論人は、行間から読み取れる暗示的に埋め込まれたメッセージの存在、すなわち拙ブログが指摘する第三次元要素の存在を、かく指摘している。
・行間を読むべき 宮崎正弘氏
http://melma.com/backnumber_45206_6248511/
・演説で言わない部分に多くの意味が込められていた 井沢満氏
http://blog.goo.ne.jp/mannizawa/e/8e0b5b16dd97fbb14b7dd01285423e79?fm=entry_awc
・穏やかな反撃となりうる言外の含み 井沢満氏
http://blog.goo.ne.jp/mannizawa/e/fdf1d3cef165bee0d5c512707b2e5755
・安倍談話は村山談話を継承すると字面で言いながら心はきっぱりと否定している 井沢満氏
http://blog.goo.ne.jp/mannizawa/e/50a4f480524e04fd46d02b78b712836d?fm=entry_awc
■そもそも談話は誰をメインターゲットとして書かれたのか
実は、安倍談話は、明確にメインターゲットを意識して書かれている。
すなわち、
第一の次元、「戦勝国側が納得する建前としての歴史シナリオ」の次元の視点で読めば、日本国民(保守層)、欧米諸国、国連機関、東南アジア諸国となる。もちろん、中韓は無関係。冒頭の、「植民地支配の波、日露戦争」の件は強烈である。
第二の次元である、「外交儀礼上のリップサービス的要素を含む演説要素」の次元の視点で読めば、東南アジア諸国を含む、国連加盟各国向けのメッセージとなる。
第三の次元は、前述の二つ次元の裏の意味、たぶん、これが本音となるであろう、「過去の談話を上書きし、歴史の真実を暗示させるメッセージの埋め込み」がなされてる次元の視点で読めば、中韓、過去の談話発表者、反日マスコミということになる。
一方、北野伯楽氏は、保守とアメリカを喜ばせるために安倍談話は書かれたとしている。
http://archive.mag2.com/0000012950/20150817000000000.html
保守を喜ばせたのは、「植民地支配の並…、日露戦争…、私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません」の文章が入ったことによるものだろう。
断片的であっても、どこかに保守層に配慮した表現を入れる、安倍政権は談話企画書に明示した、と私は予測する。
なお、保守を喜ばせるために書かれたものであることは、「次世代の党」の平沼赳夫党首のコメントがいち早く産経から報道された事実、読売の最近の世論調査結果から、安倍談話支持>安倍内閣支持となっていることからも、裏付けられる。
・「おわびはもうやめるべき」次世代・平沼党首コメント
http://www.sankei.com/politics/news/150814/plt1508140021-n1.html
・70年談話を「評価する」48%…読売調査
http://www.yomiuri.co.jp/politics/20150817-OYT1T50088.html?from=ytop_main3
そして、どの次元から読んだとして、中韓だけに配慮した形跡は、たぶん、ない?中韓首脳が、表だって安倍談話を非難できないのは、難航不落であるばかりでなく、そもそも中韓をターゲットに書かれていないため、付け入る隙がない、と解するのである。
もちろん、中共は終戦時政権にはなく、韓国は終戦時国家でもなかった。
特に、韓国については、これまで日韓首脳会談がないことを含め、韓国という国がなかったことを前提に作文した、ということだ。その点において、中韓に謝罪を要求され続けることを拒否する政治文書となった感がある。
要するに、韓国政府が談話批判すれば、日本政府が、終戦時韓国という国は存在しておらず、韓国で教科書に書かれていることがひっくり返る可能性があるので、韓国政府は、手も足も出ないと読めるのだ。
安倍首相が、近々、北京を訪問する予定となっているそうだが、抗日行事と切り離したスタンスと安倍政権中枢が言及しているのは、中共は歴史認識についてふれない前提で、会談がセットされたことが決定済みであることを意味している。
ここにきて、中共が安倍首相夫人の靖国参拝を批判しているのは、国内対策として、批判できそうなターゲットをそこに見出したに過ぎない。閣僚批判をすれば、安倍談話を根拠に逆襲を喰らうことを恐れているとも読めるのだ。
■ターゲット別にどのような仕掛けが為されたのか
「戦勝国側が納得する建前としての歴史シナリオ」、「外交儀礼上のリップサービス的要素を含む演説要素」、そして、主語・キーワード操作による「過去の談話を上書きし、歴史の真実を暗示させるメッセージの埋め込み」がなされていることについて、説明したが、実は、政権側に立って見た場合、マトリクス的に細分化されたターゲット別に、意図するメッセージが配置されている(込められている)と私は読んだ。
以下は、ターゲット別の詳細。
―――――――――――――――――
・戦勝国
敗戦国として反省しているという趣旨の文言で表現。ただし、寸止め談話とした。(謝罪外交を要求するのであれば、将来、外交的武器とすることを予告?)
・東南アジア諸国
冒頭にて「植民地支配の波がアジアに押し寄せた、日露戦争が植民地支配のもとにあった多くのアジアやアフリカの人々を勇気づけました」と書いてあるため、植民地解放戦争のために戦ったと本当は言いたい???
・中韓
談話「外交儀礼上のリップサービス的要素を含む演説要素」で書かれていない、侮辱、謀略的対応を続けるなら、今後は、一切の謝罪外交を拒否すると言外の意味で宣言?(将来、外交的武器とすることを予告?)
・過去の談話発表者
首相として一応踏襲と発言したが、談話は、踏襲されたうえで、最後の謝罪(謝罪を続ける宿命を負わせてはなりません)とした点において、過去の談話は、(過去のコメントと今回の談話で)、完全に上書きされ、過去の談話発表者は反論の余地を失った?(これ以上過去の談話を蒸し返すと、今までは放免してきましたが、これからはそうなりませんよ???)
・反日マスコミ
政府に謝罪談話を期待しているようだが、重要法案の条文解説記事すら書けない記者に、正確な論評が期待できるはずがない?あの程度の法律知識、あの程度の歴史知識、あの程度文章スキルで、今回の安倍談話の瑕疵を見つけることすら難しいはずである。(政権中枢の高笑い???)
・保守層
とりあえず、今回の談話はこれが精いっぱい。ただし、謝罪的要素の談話は今回が最後。これで納得してほしい。
―――――――――――――――――
http://blog.livedoor.jp/waninoosewa/archives/1652059.html
平成27年8月17日の読売朝刊 一面からの抜粋
戦後70年安倍談話 上 「おわび」保守派に予告
首相のこだわりは、戦後世代が増える中で、アジア各国に謝罪を続けることに終止符を打つことだった。首相は祖父・岸信介元首相の回顧録を読み、歴史観を整理した。岸氏は1957年5月の初外遊前の記者会見で、先の大戦について「アジア諸国に迷惑をかけたことも事実だ。謙虚な気持ちで諸国と協力したい」とおわびの気持ちを述べた。首相は、それまで何度も否定的な考えを示してきた「おわび」について、「おわびの気持ちを述べることで、終止符を打てるならば」と考えを変えた。
問題は、自らに近い保守層からの評価だった。保守派の論客である中西輝政京大名誉教授や長谷川三千子埼玉大名誉教授らは、談話で謝罪色が強まることを懸念していた。特に、中西氏は「21世紀構想懇談会」のメンバーとして、報告書に「侵略」を盛り込むことに最後まで反対したとされる。自らがよりどころとする保守派から談話を批判されたら、首相はたちまち求心力を失う。首相は閣議決定前の数日前、ひそかに保守派の論客や議員に談話内容を伝え、理解を求めた。
内容を知った高市総務相は、首相に「『おわび』が入っているじゃないですか」と驚いたように語った。首相はこう切り返した。「俺がやれるのはここまでが精いっぱいだ」
―――――――――――――――――
・玉虫色解釈、主語外しの手法によって諸外国に転化可能 水間政憲氏
http://mizumajyoukou.blog57.fc2.com/blog-entry-2039.html
・安倍談話は外交的武器としての性格を有する(それ以前の談話は敵方の武器) 小坪しんや議員
https://samurai20.jp/2015/08/abedanwa/
・安倍談話は寸止め談話 安濃豊氏
http://blog.livedoor.jp/giranbarekanjya/archives/51458066.html
―――――――――――――――――
ここで、まとめに入らせていただく。
本稿では、安倍談話の仕掛けについて、文章作法本的視点から、分析、解読を行った。
この政治文書を取るに足らず、期待はずれなどと語る保守層が一部にいることを私は知っている。
前稿と本稿は、そういう判断を下された、保守の論客向けとなることを意識している。
私の安倍談話の、最終評価は、こうなる。
―――――――――――――――――
歴史検証作業が出遅れている状況の中で、保守層論客からかくあるべき論を並べられ、種々の制約が課され、難易度が極めて高い文章化仕様(無理筋だらけ?)に対し、官邸スタッフが挑戦しその要求仕様について現状でできる精いっぱいの談話を完成させた。
―――――――――――――――――
一方で、10年後の談話は政治スケジュール化される可能性を否定しない。
ただし、その場合は、侵略、植民地支配の否定を伴うことになるだろう。歴史検証作業が終了していることは当然である。
もちろん、今回の談話を批判した、保守の論客の皆様におかれては、次の10年後に向けて、安倍首相談話に施された数々の仕掛けを理解いただき、歴史検証作業の着手に取りかかる必要があるだろう。それが、批判した行為に付随する矜持というものであろう。
まして、これほどの仕掛けが施された文書の狙いを読み込まず、批判するのは、どうか?と言いたくなるのである。
そして、当然のことであるが、歴史捏造に係った者、政府に謝罪と補償を求め続けた者たちは、「国家を貶めた報い」としての咎を受けるべきである。
最後に、このような難航不落の政治文書、歴史的には100年に一度出現するかしないかという、快文書(怪文書の側面もある)ではあるものの、100年後の人たちは、この政治文書の仕掛けを適正に分析・評価し、歴史教科書や文章作法本などに引用されんことを期待しつつ、本稿を終える。
長文となりましたが、最後までお読みいただき誠にありがとうございました。
安倍談話を魔方陣的視点から解き明かすと-----その狙いは?
http://nihonnococoro.at.webry.info/201508/article_20.html
前稿では、古代の文書並の仕掛けが、安倍談話に仕掛けられている可能性を指摘した。
本稿では、安倍談話を、「結界のはられた魔方陣」的仕掛けが施された政治文書として眺めた場合、どういう仕掛けが施されているのか、文章作法本的視点から、分析を試みる。
■文章作法的にどういう性格を持った文章なのか
私は、文章の書き方本、作法本、何冊か読んでいる。実は、文章作法本を読むのが好きなのだ。
論文ものでは、「論文のレトリック」澤田昭夫(講談社学術文庫)が秀逸だと思っている。「理科系の作文技術」(木下是雄)は、基本中の基本について書いてある良書だと思う。
この二冊については、正当な文章作法本と評価している。
一方、これらと対極に位置づけられる、朝日新聞社から出ている、本田勝一の文章作法本、読んではみたものの核心部分が、「理科系の作文技術」ほどの明快さ、切れ味に欠けることに気が付いている。捏造シナリオという意図が前提にあってそう書いているのであろう。
さて、この種の本は、論文作成の大学生などをターゲットとする関係で、曖昧さを極力排除し、わかりやすくまとめる、わかりやすく表現するスキルを身につける目的で書かれている。
文章に、言外の意味を持たせることは、基本的に推奨されていない。
ところが、安倍談話は違う。書かれた文章は、建前的な歴史シナリオ、外交儀礼的な文章が続く。何度か読めば、書かれている前提条件的表現を読み込むと、そうでない前提の場合、すなわち行間の意味が透けてくるように書いてある。
田母神俊雄のツイッターコメントがさほど問題視されず、百田尚樹がどうして左翼から標的にされやすいか、田母神俊雄は対象を正確に特定し書かれている(批判する相手に対して論争する意思表示を含む)のに対し、百田尚樹の場合は表現的にストレートであるものの対象が大ざっぱで曖昧な部分がなきにしもあらず、という印象がある。
つまり、田母神俊雄は理科系的に正確な文章を信条とし、百田尚樹は小説家である関係で文科系でありシナリオ的には面白いのだが正確さの点で今一つの部分がある。朝日の新聞記事などは、田母神俊雄の文章と比較すれば、作法的には悪の作法の限りをつくしていると言えるかもしれない。
これに対し、安倍談話は、文章作法本の価値観で眺めれば、言外の読み方ができる点において、学生が論文を書く際に必要となる(正当な)表現作法とは言い難い。意図して、言外の意味を持たせコントロールした点において、朝日の新聞記事以上の「悪の作法」を駆使しているのである。
その一方で、建前で書かれた部分、外交儀礼的表現については、それなりの美文である。
文章スキル的に、突出したレトリックスキルを有する政治家が、これら文章作法を駆使してまとめたと見れば、「重要法案の条文を読みこなせない政治記者たち」に、批判できる余地を見いだせるはずがない、という見方ができる。
政治記者たちは言うだろう。自分たちの意図と違うと。しかし、これまで、重要法案(特定秘密保護法、テロ3法、安保法制)の条文を引用した記事が書けていない点において、政治記者は、公務員的モノサシを適用すると、初級か中級公務員程度の文章スキルと評価せざるを得ない。社説は、その程度の人物が書いた文章ということである。
安倍談話は、新聞記事を書いている記者たちが、束になろうが、逆立ちしても書けない文章なのである。
記者諸君、悔しかったら、安保法制の条文を引用した記事を書いてみたまえ!
安倍談話の作文は、最近の重要法案(特定秘密保護法、テロ3法、安保法制)と同様、安倍首相の首相補佐官、磯崎陽輔議員が手がけたものであることは自明である。
私は、これら重要法案の条文添削、説明文書、Q&A、解釈解明等、一連の文章化作業に係った人物(たぶん、磯崎陽輔議員)が、安倍談話を渾身の力でまとめ上げていく姿を想像している。
なんとなく、(良い意味での)政権中枢の高笑い???が聞こえてくるような気がするのである。
そして、同時に、これまで良書だと思ってきた「文章作法本」が如何に「きれいごとの世界」の文章作法本であったか、について知るのである。
すなわち、安倍談話は、文章作法的に、学生向けの文章作法本とはなりえないが、「政治文書の書き方」みたいな文章作法本があれば、最高の教材となりうるのである。
■安倍談話の狙いは何だったのか
一言で書くとこうなる。
日本の保守層とアメリカをターゲットとし、過去の談話を完全否定し、敗戦国としての謝罪はこれで最後としたい、と意思表示し、同時に、中韓による歴史認識に係わる度重なる謀略的外交攻勢に対し、これ以上続ければ反転攻勢するぞと寸止めした、ところにある。
■どういう人がどういう役割を担ったのか
・談話骨格作成者
安倍首相本人である。安倍首相は、祖父岸信介元首相の回想録を読み、祖父の願いの実現、いや祖父が導いた戦後世界の最終処理の現実化を目指した。岸信介元首相の回顧録を読み、あの巣鴨プリズンにおられた方々の気持ちを安倍首相は理解し、汲み取ったはずである。
・歴史シナリオ作成者
近現代史、日米外交史に明るい方。渡辺惣樹氏の歴史書を読まれている方なら、安倍談話の歴史シナリオは、渡辺惣樹氏の歴史書のまえがきかあとがきに出てくる、一般化処理された、さらりとした筆致に似たものに気づかれていることとと思う。私は、歴史シナリオ作成者は渡辺惣樹氏か、渡辺惣樹氏の歴史書をかなり読み込んだ人物であろうと予想する。
・スピーチライター
オバマ大統領の選挙期間中の演説を誰よりも理解し、安倍首相議会演説の草稿に参加した人物。多分、自民党本部関係者?
この人物は、相当前に、スピーチライターとして、安倍首相に談話原稿を提出している可能性がある。私が同じ立場なら、迷わずそうしたからだ。
・キーワード処置、レトリック担当
ずばり磯崎陽輔議員である。国会議員の中で、ダントツのレトリックスキルを有する議員。新聞記者、言論人でこの議員の文章表現スキルに敵う人はいないだろう。
■どういう作業手順で作成されたのか
①安倍首相が骨格を作成、各担当に提示
②歴史シナリオ作成者が、全体構成、位置づけ、論旨を明示
③スピーチライターが、表層的な部分の建前原稿を作成
④キーワード・レトリック担当が、原稿の表の意味、裏の意味、暗示されるメッセージを吟味、最終チェック
⑤個別修正の都度、②~④を繰り返す
⑥関係者全員での読み合わせ
⑦最後に官邸神社?での奉納?手続き?を経て発表
■談話作文は、概観的(前半、後半)に読むと、どういう論理構造になっているのか
ここが本稿の核心となる。
談話は、時限的に区切ると、①明治から戦争の時代、②戦争の時代、③戦後から現在まで、④未来、の4つに分かれる。
ただし、それぞれについて、実は、3次元構造になっている。
すなわち、①~④について、
「戦勝国側が納得せざるを得ない、建前としての歴史シナリオ」(第一次元)、
「外交儀礼上のリップサービス的要素を含む演説要素」(第二次元)、
そして、第三次元は、談話本文に書かれていないことだが、主語・キーワード操作による「過去の談話を上書きし、歴史の真実を暗示させるメッセージの埋め込み」が為されている。第三次元は、前述の二つ次元の裏の意味、たぶん、これが本音を巧妙に暗示する役割を担っている。(安濃豊氏指摘の「寸止め処置」)
この政治文書は3次元構造となっている点において、極めて珍しい文書である。また、恐るべき仕掛けが施されている。
読者の皆様は、三次元文書について、どういうイメージを持たれるであろうか?
私は、難解ではあるものの堅牢なイメージを抱いている。
この談話が文章的に一見散漫かつ長文となったのは、三次元機能を付加した結果であると私は見ている。
前稿で、安倍談話を魔方陣に例えて説明した最大の理由は、ここにある。
安濃豊氏、高橋洋一氏は、「戦勝国側が納得せざるを得ない、建前としての歴史シナリオ」(第一次元)、「外交儀礼上のリップサービス的要素を含む演説要素」(第二次元)について、かく論評している。
前半は歴史シナリオにおいて、日本が世界が植民地支配の時代において独立を守り抜くために懸命の努力をした件(欧米列強の植民地支配への反発???)で始まり、後半は外交的儀礼に「カントの3角形なる理論」を用いた誰も否定できないリップサービス的作文に徐々にシフトしたと解することができる。
・前半部分は植民地支配否定、後半はリップサービス 安濃豊氏
http://blog.livedoor.jp/giranbarekanjya/archives/51457968.html
・後半の戦後部分以降の表現においては「カントの三角形」(民主化、経済依存度、国際機関加入)理論を駆使した外交文書の性格を有する 高橋洋一氏
・反省とおわびを分離し、おわびを平和と繁栄のための尽力するという行動で示した ブログ「私的憂国の書」
http://yukokulog.blog129.fc2.com/blog-entry-2048.html
■各次元の相互関係はどうなっているのか
「戦勝国側が納得する建前としての歴史シナリオ」は、建前の歴史シナリオではあるものの、一応表の意味として受け取れる。
「外交儀礼上のリップサービス的要素を含む演説要素」は、建前の外交メッセージではあるものの、一応表の意味として受け取れる。
主語・キーワード操作による「過去の談話を上書きし、歴史の真実を暗示させるメッセージの埋め込み」は、前述2つの建前に対し、中韓、反日マスコミにつけこませない意図が込められている。欧米諸国に対しては寸止め、したと読み取れる箇所もある。
外交儀礼上の作文に、前置き的な表現が続き、それを前提条件と読めば、中韓が前提条件を外した外交に出れば、日本政府は反撃できる根拠を宣言したとも読める。
村山談話、河野談話を上書きし、第二の村山談話、第二の河野談話の出現を文章的に予防しうる内容ともとれる。
数人の言論人は、行間から読み取れる暗示的に埋め込まれたメッセージの存在、すなわち拙ブログが指摘する第三次元要素の存在を、かく指摘している。
・行間を読むべき 宮崎正弘氏
http://melma.com/backnumber_45206_6248511/
・演説で言わない部分に多くの意味が込められていた 井沢満氏
http://blog.goo.ne.jp/mannizawa/e/8e0b5b16dd97fbb14b7dd01285423e79?fm=entry_awc
・穏やかな反撃となりうる言外の含み 井沢満氏
http://blog.goo.ne.jp/mannizawa/e/fdf1d3cef165bee0d5c512707b2e5755
・安倍談話は村山談話を継承すると字面で言いながら心はきっぱりと否定している 井沢満氏
http://blog.goo.ne.jp/mannizawa/e/50a4f480524e04fd46d02b78b712836d?fm=entry_awc
■そもそも談話は誰をメインターゲットとして書かれたのか
実は、安倍談話は、明確にメインターゲットを意識して書かれている。
すなわち、
第一の次元、「戦勝国側が納得する建前としての歴史シナリオ」の次元の視点で読めば、日本国民(保守層)、欧米諸国、国連機関、東南アジア諸国となる。もちろん、中韓は無関係。冒頭の、「植民地支配の波、日露戦争」の件は強烈である。
第二の次元である、「外交儀礼上のリップサービス的要素を含む演説要素」の次元の視点で読めば、東南アジア諸国を含む、国連加盟各国向けのメッセージとなる。
第三の次元は、前述の二つ次元の裏の意味、たぶん、これが本音となるであろう、「過去の談話を上書きし、歴史の真実を暗示させるメッセージの埋め込み」がなされてる次元の視点で読めば、中韓、過去の談話発表者、反日マスコミということになる。
一方、北野伯楽氏は、保守とアメリカを喜ばせるために安倍談話は書かれたとしている。
http://archive.mag2.com/0000012950/20150817000000000.html
保守を喜ばせたのは、「植民地支配の並…、日露戦争…、私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません」の文章が入ったことによるものだろう。
断片的であっても、どこかに保守層に配慮した表現を入れる、安倍政権は談話企画書に明示した、と私は予測する。
なお、保守を喜ばせるために書かれたものであることは、「次世代の党」の平沼赳夫党首のコメントがいち早く産経から報道された事実、読売の最近の世論調査結果から、安倍談話支持>安倍内閣支持となっていることからも、裏付けられる。
・「おわびはもうやめるべき」次世代・平沼党首コメント
http://www.sankei.com/politics/news/150814/plt1508140021-n1.html
・70年談話を「評価する」48%…読売調査
http://www.yomiuri.co.jp/politics/20150817-OYT1T50088.html?from=ytop_main3
そして、どの次元から読んだとして、中韓だけに配慮した形跡は、たぶん、ない?中韓首脳が、表だって安倍談話を非難できないのは、難航不落であるばかりでなく、そもそも中韓をターゲットに書かれていないため、付け入る隙がない、と解するのである。
もちろん、中共は終戦時政権にはなく、韓国は終戦時国家でもなかった。
特に、韓国については、これまで日韓首脳会談がないことを含め、韓国という国がなかったことを前提に作文した、ということだ。その点において、中韓に謝罪を要求され続けることを拒否する政治文書となった感がある。
要するに、韓国政府が談話批判すれば、日本政府が、終戦時韓国という国は存在しておらず、韓国で教科書に書かれていることがひっくり返る可能性があるので、韓国政府は、手も足も出ないと読めるのだ。
安倍首相が、近々、北京を訪問する予定となっているそうだが、抗日行事と切り離したスタンスと安倍政権中枢が言及しているのは、中共は歴史認識についてふれない前提で、会談がセットされたことが決定済みであることを意味している。
ここにきて、中共が安倍首相夫人の靖国参拝を批判しているのは、国内対策として、批判できそうなターゲットをそこに見出したに過ぎない。閣僚批判をすれば、安倍談話を根拠に逆襲を喰らうことを恐れているとも読めるのだ。
■ターゲット別にどのような仕掛けが為されたのか
「戦勝国側が納得する建前としての歴史シナリオ」、「外交儀礼上のリップサービス的要素を含む演説要素」、そして、主語・キーワード操作による「過去の談話を上書きし、歴史の真実を暗示させるメッセージの埋め込み」がなされていることについて、説明したが、実は、政権側に立って見た場合、マトリクス的に細分化されたターゲット別に、意図するメッセージが配置されている(込められている)と私は読んだ。
以下は、ターゲット別の詳細。
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・戦勝国
敗戦国として反省しているという趣旨の文言で表現。ただし、寸止め談話とした。(謝罪外交を要求するのであれば、将来、外交的武器とすることを予告?)
・東南アジア諸国
冒頭にて「植民地支配の波がアジアに押し寄せた、日露戦争が植民地支配のもとにあった多くのアジアやアフリカの人々を勇気づけました」と書いてあるため、植民地解放戦争のために戦ったと本当は言いたい???
・中韓
談話「外交儀礼上のリップサービス的要素を含む演説要素」で書かれていない、侮辱、謀略的対応を続けるなら、今後は、一切の謝罪外交を拒否すると言外の意味で宣言?(将来、外交的武器とすることを予告?)
・過去の談話発表者
首相として一応踏襲と発言したが、談話は、踏襲されたうえで、最後の謝罪(謝罪を続ける宿命を負わせてはなりません)とした点において、過去の談話は、(過去のコメントと今回の談話で)、完全に上書きされ、過去の談話発表者は反論の余地を失った?(これ以上過去の談話を蒸し返すと、今までは放免してきましたが、これからはそうなりませんよ???)
・反日マスコミ
政府に謝罪談話を期待しているようだが、重要法案の条文解説記事すら書けない記者に、正確な論評が期待できるはずがない?あの程度の法律知識、あの程度の歴史知識、あの程度文章スキルで、今回の安倍談話の瑕疵を見つけることすら難しいはずである。(政権中枢の高笑い???)
・保守層
とりあえず、今回の談話はこれが精いっぱい。ただし、謝罪的要素の談話は今回が最後。これで納得してほしい。
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http://blog.livedoor.jp/waninoosewa/archives/1652059.html
平成27年8月17日の読売朝刊 一面からの抜粋
戦後70年安倍談話 上 「おわび」保守派に予告
首相のこだわりは、戦後世代が増える中で、アジア各国に謝罪を続けることに終止符を打つことだった。首相は祖父・岸信介元首相の回顧録を読み、歴史観を整理した。岸氏は1957年5月の初外遊前の記者会見で、先の大戦について「アジア諸国に迷惑をかけたことも事実だ。謙虚な気持ちで諸国と協力したい」とおわびの気持ちを述べた。首相は、それまで何度も否定的な考えを示してきた「おわび」について、「おわびの気持ちを述べることで、終止符を打てるならば」と考えを変えた。
問題は、自らに近い保守層からの評価だった。保守派の論客である中西輝政京大名誉教授や長谷川三千子埼玉大名誉教授らは、談話で謝罪色が強まることを懸念していた。特に、中西氏は「21世紀構想懇談会」のメンバーとして、報告書に「侵略」を盛り込むことに最後まで反対したとされる。自らがよりどころとする保守派から談話を批判されたら、首相はたちまち求心力を失う。首相は閣議決定前の数日前、ひそかに保守派の論客や議員に談話内容を伝え、理解を求めた。
内容を知った高市総務相は、首相に「『おわび』が入っているじゃないですか」と驚いたように語った。首相はこう切り返した。「俺がやれるのはここまでが精いっぱいだ」
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・玉虫色解釈、主語外しの手法によって諸外国に転化可能 水間政憲氏
http://mizumajyoukou.blog57.fc2.com/blog-entry-2039.html
・安倍談話は外交的武器としての性格を有する(それ以前の談話は敵方の武器) 小坪しんや議員
https://samurai20.jp/2015/08/abedanwa/
・安倍談話は寸止め談話 安濃豊氏
http://blog.livedoor.jp/giranbarekanjya/archives/51458066.html
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ここで、まとめに入らせていただく。
本稿では、安倍談話の仕掛けについて、文章作法本的視点から、分析、解読を行った。
この政治文書を取るに足らず、期待はずれなどと語る保守層が一部にいることを私は知っている。
前稿と本稿は、そういう判断を下された、保守の論客向けとなることを意識している。
私の安倍談話の、最終評価は、こうなる。
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歴史検証作業が出遅れている状況の中で、保守層論客からかくあるべき論を並べられ、種々の制約が課され、難易度が極めて高い文章化仕様(無理筋だらけ?)に対し、官邸スタッフが挑戦しその要求仕様について現状でできる精いっぱいの談話を完成させた。
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一方で、10年後の談話は政治スケジュール化される可能性を否定しない。
ただし、その場合は、侵略、植民地支配の否定を伴うことになるだろう。歴史検証作業が終了していることは当然である。
もちろん、今回の談話を批判した、保守の論客の皆様におかれては、次の10年後に向けて、安倍首相談話に施された数々の仕掛けを理解いただき、歴史検証作業の着手に取りかかる必要があるだろう。それが、批判した行為に付随する矜持というものであろう。
まして、これほどの仕掛けが施された文書の狙いを読み込まず、批判するのは、どうか?と言いたくなるのである。
そして、当然のことであるが、歴史捏造に係った者、政府に謝罪と補償を求め続けた者たちは、「国家を貶めた報い」としての咎を受けるべきである。
最後に、このような難航不落の政治文書、歴史的には100年に一度出現するかしないかという、快文書(怪文書の側面もある)ではあるものの、100年後の人たちは、この政治文書の仕掛けを適正に分析・評価し、歴史教科書や文章作法本などに引用されんことを期待しつつ、本稿を終える。
長文となりましたが、最後までお読みいただき誠にありがとうございました。
この記事へのコメント
安濃さんの説が全国的に認知される日が来ることを願っております。
本稿と前稿、安濃さんの斬新な分析がなければ、ここまで纏めることはできませんでした。また、引用許可いただいたことを含め、ありがとうございました。