イスラム国誘拐事案 どう情勢分析しどう将来予測するか

日本人誘拐事案に関連し、人質一人が殺害されたという趣旨の情報が配信されている。
また、同時に、イスラム国が今後どう出るのか、という類の報道記事が激増している。

政府も外務省を中心に、情報収集に余念がないと、私は見ている。ただ、政府内でどういう次元で何が行われているか、わからない人にはまったくわからない世界だと私は思っている。かくいう私もその詳細を知る立場にはない。

たとえば、民主党の徳永エリは、イスラム国という国の存在、経緯、イスラム諸国の動きを知らずに、語っているようなところがある。産経報道によれば、「集団的自衛権の行使容認、憲法改正、武器輸出三原則」という言葉を徳永議員は使ったが、安倍首相と徳永議員がこのテーマで2人きりで論戦したとして、5分後にボロが出るのは、どちらであるか、説明するまでもない。

生活の党の山本太郎は、イスラム国のメンバーからリツイートされるような言動を行った。テロリストにとっては望ましい政治家と認定されたようである。
維新の党の江田憲司は、イスラム国広報担当者がするような発言、軍事的手段として誘拐者救出を選択すべきでない?と受け取られかねない趣旨の発言をした。

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http://www.sankei.com/affairs/news/150123/afr1501230011-n1.html

小沢一郎代表率いる「生活の党と山本太郎となかまたち」の山本太郎参院議員は21日、「2億ドルの支援を中止し、人質を救出してください」とツイートした。これは安倍晋三首相宛となっていた。

 山本氏のツイート内容が気に入ったのか、イスラム国のメンバーとみられる人物が「リツイート」と呼ばれる転載機能を利用して“拡散”する事態も発生した。自民党の佐藤正久元防衛政務官は「イスラム国メンバーの中に、日本語が分かる者がいるのかな?」と意味深長なツイートをした。

http://www.sankei.com/column/news/150124/clm1501240003-n1.html

 ▼維新の党の江田憲司代表は、事件の一報直後に「イスラム国」の広報担当者のような発言をした。「野放図に自衛隊を出して米軍や他国軍と協力すると、日本人も日常的にテロと直面することになる」と。

 ▼民主党の徳永エリ参院議員は「(首相が)なんと言おうが、集団的自衛権の行使容認、憲法改正、武器輸出三原則の変更。国際社会は日本は変わってしまったと受け止めている」と、犯人が手をたたいて喜びそうなコメントをしている。岡田克也代表が「政府の足を引っ張るようなことはしない」と言おうが、民主党は何も変わっちゃいない。

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これら3人の政治家(政治屋)が、テロリスト支援議員だと名指しするのは簡単であるが、情報収集、状況分析、将来予測するスキルもないのに、こう語っているのであれば、議員として国家を守る義務すら放棄しているようである。
そもそも国家の役割とは、「国民の生命・財産を守ること」であると考える立場からは、これら3人の言動は、論外としか言いようがない。

特に、江田憲司は、言うタイミングを間違えたように思う。国会会期中に、事態の結果が出てから言うべきだったと私は思う。この時期での発言なら、イメージ的には、土井たか子や福島瑞穂と同次元になってしまう、ことを指摘せざるを得ない。

民主党の大野元裕のコメントも揚げ足取り目的にしか受け取れない。15年もアラブ圏の在外公館で勤務していたにしては、自分が一番詳しいというプライドが鼻につくのだ。私は、イスラム国側が安倍首相外遊のタイミングで誘拐事案をぶつけてきただけだろうという認識である。言論の自由と議員の不逮捕特権によって、何を言っても許されるかもしれないが、大野元裕は、安倍首相の今回の中東訪問が、かつての派遣国が蚊帳の外となっていたため、お気に召さなかったということなのだろう。

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http://www.sankei.com/politics/news/150124/plt1501240010-n1.html

民主・大野氏 首相の支援表明内容「悪意ある人たちに口実与えた」

 イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」が日本人2人を殺害すると脅迫した事件に関し、民主党の大野元裕参院議員は24日のTBS番組で「人道支援はやるべきだが、やり方、言い方は、悪意で待っている人たちにいい口実を与えた」と語った。安倍晋三首相が事件前の17日にエジプトでイスラム国対策として中東諸国に2億ドルの支援を表明した演説内容やタイミングを問題視した形だ。

 さらに、大野氏は「不用意な政府側の発言はアラブの人たちを向こうへ追いやってしまう」とも述べた。具体例として、首相が事件直後に「テロに屈しない」と表明した20日のイスラエルでの記者会見を取り上げ、「イスラエルの国旗がすぐ横にあった」と指摘。その上で「政府が不用意なことをやるときには、われわれはしっかりただしていく」と語った。

 自民党の佐藤正久参院議員は同じ番組で「多くのイスラム国家は親日で変わらないが、イスラム国といわれる疑似国家だけが異質だ。ここを間違ってはいけない」と強調した。

 20日の記者会見では首相の両側に日本とイスラエルの国旗が掲げられていた。首相が外遊先で記者会見を行う場合、日本と訪問国の国旗を掲揚するのは一般的となっている。20日の首相記者会見はもともと予定されていたが、その直前に脅迫事件が発生した。

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ただ、大野元裕議員の経歴を見ると、異常に特定地域に集中していることは、異常と言わざるを得ない。外務省はなぜ、このような人事を続けたのか、本人の希望だったにせよ、成り手がいない?ため希望者優先でいいのか、という意味もある。

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1989年(平成元年)3月 - 国際大学国際関係学研究科修士課程修了  4月 - 在イラク日本大使館専門調査員
1990年(平成2年) - 在アラブ首長国連邦日本大使館専門調査員
1993年(平成5年) - 財団法人中東調査会研究員
1994年(平成6年) - 外務省国際情報局分析二課専門分析員
1995年(平成7年) - 在カタール日本大使館専門調査員
1997年(平成9年) - 在ヨルダン日本大使館書記官
2000年(平成12年) - 在シリア日本大使館書記官
2004年(平成16年) - 財団法人中東調査会上席研究員

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外務省は、このような現地渡り鳥人事を今も続けているのであろうか?だとしたら、やめさせるべきだ。特定国の調査指向の人間優先人事をやっている限り、外務省の情報収集力が上がるとは思えないからだ。
こういう人事をやっていれば、情報は組織(外務省)に帰属せず、個人に帰属する結果を招くのは明らかだ。私としては、大野元裕の人事は、例外であると思いたいところだが、この種の仕事をする人たちに共通することは、情報を組織ではなく、個人に帰属させようと意図する職員が存在することである。(途上国の公務員の場合は、特にその傾向が強い)もちろん、政治的立ち位置がはっきりせず?、財団法人に過ぎない、中東調査会に便宜を図るための在外公館人事は不要であるという意味もある。

一方、自民党の石破茂は、こんな事を言っている。

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http://www.yomiuri.co.jp/politics/20150124-OYT1T50110.html?from=ytop_ylist

対外情報収集、専門機関の創設検討を…石破氏
2015年01月24日 21時10分

 石破地方創生相は24日のテレビ東京の番組で、「イスラム国」とみられるグループによる邦人人質事件に関し、「情報収集の組織をきちんと作ることに取り組むかどうか、早急に詰めていかねばならない」と述べ、対外情報を収集する専門の情報機関の創設を検討するべきだとの考えを示した。

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大野元裕のような在外公館渡り鳥人事が横行している関係で、外務省が組織として蓄積すべき情報が渡り鳥人事の影響で情報が個人に帰属する、という実態?を憂いて発言したのであれば、私は納得する。

外務省組織図をしっかり見ればわかることだが、中東アフリカ局、国際情報統括官、在外公館など、一応、情報収集する組織は存在している。要は機能していないか(情報が組織ではなく個人に帰属)、彼らの一部が情報があっても官邸に上げないようにしているか、彼らの一部が本当に無能か、ただそれだけのことに過ぎない。

民間人の、私の場合は、情報があっても一切上げてこない(生意気な)海外駐在員の存在の世話を一時期させられたことがあり、石破茂のこの発言は、自分の意のまま(派閥的な視点から)になる組織が欲しいという動機もあるように思える。そういう意味で、真に受けてはならない。上記で山本太郎議員のリツイートにコメントした、佐藤正久議員あたりがそう言っているなら、信用してもいいかもしれないという意味である。


それでは、本論に入ろう。


拙ブログは、公開情報から分析、将来動向を予測する主義である。一介の民間人に過ぎないが、自分が担当した分野は、そういう主義でやってきた。
そして、ブログにて安倍外交の成果の分析を行った。かつて海外駐在等の経験があったので、その経験からわかることを書いてきた。

マスコミ記事漬けの生活を送ってきた方にとっては、マスコミ経由で得られるスクープが絶対で、スクープ報道から分析することが、国際情報分析の王道と考えているであろうと思われるが(北朝鮮の場合は特にこの傾向が強い)、それは違う。普段からの地道な調査、情報収集があって、突如飛び込んできたスクープ記事の分析が可能となるのだ。年中、スクープばかり追いかけている人には、つかまされた情報の真偽がわかるはずもない、ということだ。(かつて、民主党でニセメール事件が起きたことを思い出してほしい)

では、たかが一介の民間人に何ができるのか、嘲笑される方、きっとおられるに違いないが、世の中には、公開情報だけで重要事案の将来予測に成功した事例がいくつも存在する。
実際、インテリジェンス本においては、その辺の手口がさらりと書いてある。本当にさらりとしか書いてないので、気が付かない人は、一生気が付かない。

ドイツの秘密情報機関 (講談社現代新書)という本では、情報収集手段として、長距離運転手のナマの情報の集積によって、現地情報が得られたとしている。

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本のPR文からの引用

東西ドイツの狭間で──東西ドイツの統一により、いかに西側スパイの諜報活動が正確なものであったかが証明された。特に、東ドイツの軍事秘密道路網のルートや、弾薬庫の情報は完璧だった。こうした情報収集活動は、スパイ衛星観測によるものより、東ドイツや東欧ブロック向けの遠距離トラック運転手からのナマ情報が大きな役割を果たしていた。……西側の雇い入れた運転手への報酬は、わずか30マルク程度の低賃金だったが、その効率は良かった。彼らは、相手側の戦車の機種など最低限の予備知識をもって、東欧諸国の顧客に製品を輸送するかたわら、東側の軍事情報を偵察した

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元外交官の加藤千幸の「国際情報の読み方」という本がある。この本においては、公開情報を資料をどのように収集し、吟味し、「相手がどうでるか」、「先をどう読むか」の情勢判断すればいいか、ウンチクが、石油ショック時代を事例に書かれている。公開情報から如何に読み解くかが、情報戦の基本中の基本だとする、この分野の名著であると私は思っている。

民間人では、小川和久の「情報フィールドノート」、「情報フィールドノート Part2」という本が出ている。こちらは、冷戦時代の軍事情勢の分析が多い。この分析もなかなかであると私は思っている。余命ブログが、人気なのは、公開されているある種の情報分析に長けており(特に軍事情報分析)、それが当たっているからなのであろう。

「岡崎久彦の情報戦略のすべて」(PHP研究所)という本にも、収集した情報の分析、将来予測のウンチクがさらりと書いてある。実は、私は、この本を読むまで、外務省という組織は情報収集するだけで、情勢分析、将来予測する人がいないのではないかと思っていたが、元外交官の岡崎久彦自身が情勢分析、将来予測した事があったと書かれており、認識を新たにした次第である。

さて、本稿の結論に移りたい。

本稿では、今回の事案の趨勢、イスラム国の情報収集、情勢分析、将来予測までは、言及しない。

だが、はっきりと言えることはある。

その国の歴史、文化、宗教、伝統をきちんと理解し、その国の人たちの生活を知り、その国の人たちときちんと話をし、その国の人たちから信頼されているのであれば、文化や宗教の違いはあっても、情報はそれなりに入ってくるし、情報分析による将来予測も的中する。

私は、海外駐在期間中、タクシーを利用すべきところ、現地小学生が登校する際に使用する、スクールバスみたいなもので度々目的地に通った。その地域の道路地図を購入し、バス時刻表を事前に手に入れ、彼の地のバス停でバスが来るのを待った。バスは本当にやってきた。小学生たちは、日本人の子供と同じようにやんちゃだった。私は、目的地を告げ小銭を払い乗車し、目的地のバス停で確かにバスは停車した。異国の地でほっとした、その日は、訪問先での話も楽しかった。ただ、治安対策上は、バスに乗ることは薦められないことは承知している。

要は、私は、バスに乗り、現地の人たちの生活ぶりを子供を通じて観察したのである。

それなりの下地もない中で、情勢分析、将来予測など、できるはずもないのである。マスコミ報道が薄っぺらく感じるのは、下地がなく、ただコピペして再編集し、危険地帯では絶対に取材しないので、生活実感が伴わないからだ。

安倍政権において、外務省は、今試されている。日本人人質事案で外務省の当該局は、24時間2交代体制となっているであろう。だが、こういう困った最中こそ、在外公館関係者が普段、どういう活動(情報収集、付き合い)しているかがわかるのである。

在外公館の職員が、かつての大野元裕のように、特定国渡り鳥だらけで、情報が組織(外務省)ではなく個人に帰属する実態となっていないことを祈るのみである。

外務省においては、花形は英語圏、欧米圏である。中東アフリカは、出世コース外であることは明らかだが、彼らが彼らなりの意地を出すのかどうか、イラン・イラク戦争開戦直前の日本人救出事案のように最後は民間人が切り札を出すのか、どのルートが解決に導く手段を提示するのか。

日本人を救出せよ!トルコ航空機決死のフライト
http://d.hatena.ne.jp/jjtaro_maru/20120412/1334232564

私は、安倍政権がとりえる選択肢は、外交的に最も信頼できるルートを通じて、解放交渉することであろうと考える。

この地域での日本最強のパートナーは、トルコであることが知られている。

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イスラム国拘束:解放交渉、トルコが鍵
http://mainichi.jp/select/news/20150123k0000m030103000c.html

「イスラム国」交渉に3ルート。トルコ・ヨルダン経由でODAと引き換え
http://www.j-cast.com/tv/2015/01/23225965.html?p=all

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基本はそれでいいだろう。

では、なぜ、イギリスやアメリカが支援をタイムリーに口にするのか?その支援とは、人質救出のための軍事作戦面での協力か後の外交交渉での貸し借りを示唆しているのであろう。私は、近い将来はそうすべきかもしれないが、今は準備が整っていない以上、その手順にはうっかり乗れないのではないかと読んでいる。江田憲司も、首相秘書官時代の英米政府との対応経験から、その種のことを意識してコメントした可能性はある。

私は、妥当なところ、トルコルートを主体にせざるを得ない気がしている。

ただ、事後の見極めとなるが、「トルコルートで解決した場合は、安倍外交のポイント」、「当該国のルートで解決した場合は、在外公館ネットワークの頑張り」(民間人含む)ということだろうと予測する。

民主党の菅首相時代、東電福島事故で記者会見したり現地視察したように派手なパフォーマンスをやったことがあったが、安倍政権は人質解放交渉で外交ポイントを上げることまでは考えないと思っている。そういう意味で、民主党政権でなくて本当に良かった。(民主党政権だった場合、徳永エリや山本太郎ができもしない解放交渉に特命大臣に任命され派遣たら………どういう結果になるのか、考えただけでもぞっとする)

そして、元岡崎久彦は、上述の著書の中で、「愛国心なき者は、外交交渉の場では決して信頼されない」と言いきっている。なぜなら、交渉相手が愛国心の塊であることが大部分であるからだ。
徳永エリ、山本太郎、江田憲司は、愛国心ある政治家なのかどうか、これ以上は書くまい、
テレビ番組で専門家を気取った、大野元裕は、どうだろう。外務省の大先輩だった、岡崎久彦から、君の愛国心は本物なのか、出演したテレビ番組で聞かれた場合、どう答えたであろうか。大野元裕のテレビ番組での発言は、愛国心があったら違う発言となった可能性を私は指摘するのである。

要は、騒がず、冷静に対処し、石油価格が下落しているのであるから、イスラム国の疲弊を待つことだ。
騒がずというのは、徳永エリ、山本太郎、江田憲司のように、普段からイスラム国について関心がないのに、騒がないということだ。

何が起ころうと、国家の役割として国民の生命と財産を守ることをきちんと認識したうえで、地道に冷静にコツコツ対応することが、後々最良の結果を生む、ということを言いたいのである。実際、官房長官の動きを見ているとそう感じ取れるのである。


補足
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イスラム国の実態について最も肉薄していると思われる研究者が運営しているサイト

中東・イスラーム学の風姿花伝
http://chutoislam.blog.fc2.com/

渡部昇一の「発想法」(講談社現代新書)という本がある。リソースフル人間になるためののすすめとして、智謀湧くが如しの人材となるためのウンチクがさらりと書いてある。

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  • 日本の対応にも?対イスラム国

    Excerpt:   銭ゲバ外道「イスラム国」がイスラム教を騙るバカ集団でしかないことは論を待たないが、それに対峙している日本政府、そして日本の世論にも、「?」と疑問を感じざるをえない。 &nbs.. Weblog: 賭人がゆく racked: 2015-01-25 23:25